「」
鼻が詰まって上手く名前を呼べたかわからない。
嗚咽や鼻水が出てないだけマシだけれども。
なに?とは俺に微笑む。
こういう微笑みが中学生らしくなくて、嫌でも俺たちと同い年じゃねぇんだって言うのを実感する。
実感するけれど、だからどうって気にするわけでもないけれど。
むしろ、安心する。
そうやって笑いかけてくれるのが、心地よくて。
俺を優しさで包み込んでくれているかのように錯覚してしまう。
「俺、まだ姉ちゃんを許せるかわかんねぇ」
は許してやってほしい、と言っていたけれど。
まだ当分、完全にわだかまりが消えたわけじゃない。
ギスギスした気持ちは払拭されたけど、怒りの種は消えたわけではない。
まだ少し、姉ちゃんを許すには時間がかかる。けれど、
「でも、きっと。姉ちゃんを許せる気がする」
俺がもう少し大人になって、人を思いやれるようになったら。きっと。
その時は怒りに任せて暴れちまったことも、きちんと姉ちゃんに謝れると思う。
やっぱり、暴力を振るったことは悪いことだし、ましてや姉ちゃんは女だ。
テニスん時みたいに、相手は男じゃない。謝らなきゃなんねぇこともわかってる。
けれど、やっぱり心ん中では許せていないから、何で謝らなきゃなんねぇんだって。ガキの俺が言っている。
もう少し、俺が大人になったら。きっと俺は許すことができると思う。
だから、今はこのままにしておく。
あせらずに、ゆっくり。時間をかけて歩みよればいい。