「そんなことより、さっさとまとめ書いて終わらせよ」
何、股間なんか押さえてんの。
そうニヤリと笑うに無性に腹が立った。
何という屈辱感と敗北感。
俺がこいつに勝てる日はそうそうないのかもしれない。
シャーペンを渡してもらい(女のくせに色気のない無地のシャーペンって…)日誌に目を通す。
正直、まとめなんかねぇんだけど。
今日も昨日と変わらず、平穏無事に一日が終わったーて思う。
きっと明日も、明後日も、その次の日も。
変わりはないんだ。
そう思うと虚しくなって来た。
何の変化もない毎日が苦痛に思えて来た。
シャーペンをくるり、くるりと回す。
何を書けばいいのか全く思いつかない。
今日一日のまとめだなんて、何の変わりもないのに簡単には書けない。
「何もなかったら変わりナシって書いとけば?」
は軽く言ったつもりなのかもしれないけれども、なんかその言葉がつっかかった。
変わり無し。
昨日も今日も明日も変わりがない。変わりが無いってことは…
あの「コト」も何の変わりもなく進んでいくってことだ。
「…簡単に言うなよ」
何も変わらないから、
「アレ」について劇的な変化も無いから、
悲しくなった。
悲しくて寂しくて泣きそうになった。
俯くと鼻がツンと痛んだ。
痛みが鼻の奥に広がり、熱が目に伝わり涙を作り出す。
大嫌いなの前だと言うのに、涙を堪えきれなかった。
ぽたぽた、とスラックスに落ちる涙は雨のように、
俺の体に染みを作って罪の意識をまた、植え付けて行った。
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