「切原くん」










ハッと我に返ると、が俺をじっと見ていた。

日誌を書き終えたみたいで、その手にはシャーペンが握られていなかった。

日誌を見ると女子特有の丸まった字なんかじゃなくて、綺麗に清書された楷書体の字がびっしり羅列してあった。

悔しいけれど、字は上手い。

力強いわけでもなく、かといってなよなよしいわけでもない、だだ綺麗な字。

思わず、息を呑んでしまうような本当に綺麗な字なんだ。認めたくないけど。

なんやかんやでの字は好きだ。

…字だけはな!








「考え事?」

「うっせーよ」






は俺がどんなに冷たく返しても全く動じない。

泣きもしねぇし、怒りもしねぇ。

俺の言うことなんか、聞き流してマスって感じでいい気分じゃねぇ。

余裕ぶった大人の女を演じてるつもりなのかはしんねぇけど、こいつの一挙一動が腹立たしい。








「あんまツンツンした態度取ってると…潰すよ」









可愛さ余らず憎さ100倍。

ギロリと睨む。

普通の人間なら固まるか、泣くか、機嫌を取るか。

だけれども、相手は。ケンカを売った相手を間違えていた。

睨みんだ俺と目があったけれど、はプイっと目を反らして素の顔で、けれども流し目でさらりとこう言った。








「…その前に握りつぶして不能にするから」











言い知れない威圧感と迫力。






信憑性抜群のその言葉に、思わず股間を押さえてしまった










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