その瞬間、右頬に鋭い痛みが走った。
わたしは打たれたんだ。母さんに。
母さんはふるふる震えて、「なんて失礼なことを言うの!謝りなさい!」と泣きそうながらも怒って言うもんだから。
わたしは今まで感じていた怒りを通り越して、母さんに失望した。
あぁ、どうせわたしなんて、ね。
父さんと一緒に死ねばよかったんだ。
そうしたら、みんな幸せになれたのに。
わたし、いらない子なんだよ。
母さんはもう、すっかり先生に骨抜きにされてるんだ。さすが親子。タイプが似てる。
思わず自嘲。
でも、母さん。
先生と母さんが結婚したらわたし、存在価値が無くなっちゃうんだよ。
母さんはもうすでに、別の生きがいを見つけてる。
わたしなんかいなくても、母さんはもう大丈夫なんだよ。
でも、わたしは無理。わたしを母さんが必要としてくれないと、なんのために生き延びたのかわからない。
だからね、母さん。
「先生と結婚したら…わたし、死ぬから」
発した声は自分でも驚くほど落ち着いていた。