それから5ヶ月。
桜の花が満開になるころ、わたしは退院した。
ちょうどその頃、卒業シーズンで学校へ全然行ってなかったけど、なんとか小学校は卒業出来た。
まだ、完全に治ったわけではなく、車椅子が手放せない。
しばらくリハビリ生活を余儀なくされ、そのまま中学に上がることは叶わなかった。
学校に通わないわたしは、毎日のようにリハビリに励む反面、先生に勉強を見て貰っていた。
先生には無理を言っていたと思うけど、先生は嫌な顔一つしないで、わたしの勉強を見てくれた。
周りが「いいなぁ」「先生独り占めしてズルイ」と言ってるのを聞くと、
明らかにわたしだけが贔屓されているみたいで、それがすごくうれしくもあり、周囲に対して優越感も感じていた。
勉強を見てもらう、というのは同年代の子と一緒に中学に上がれなかったっていうのもあったけど、何より先生の側に居たかったから。
勉強は嫌いだけれど、大好きな先生に誉められるなら苦じゃなかった。
先生の綺麗な優しい手のひらで、頭を撫でられるのがたまらなく好きだった。
先生にただ、とにかく誉められたかった。
先生のお陰で、わたしの成績はウナギ上りに上昇し、夏が明ける頃には中一の内容を終わらせ、わたしの足も少しずつ動くようになっていた。
全てがわたしの中で順調に進んでいて、こんなに幸せでいいのか、と自問自答したくなるくらい。
けれど、幸せなことは長く続かない。
わたしはそれを失念していた。