その先生は非常にハンサムで、看護士さんや患者さんからの人気も高く、何より腕の立つ人間だった。
「今日から先生が君の担当だよ。よろしくね」
わたしに向けたその微笑みはやたらと爽やかで、テレビドラマに出てくる俳優を彷彿させた。
先生は毎日の回診以外の日も、なぜかわたしの病室にまでやって来て話をしてくれた。
先生の話は学術的なことから始まり、昨日見たテレビのこと、小さい頃の話に至るまで。
まるで、自分を知ってもらおうと、わたしにアピールしているみたいに。
最初、先生の勢いに圧倒されて、ただ話を聞いてるだけだったけど。
先生の話はとても楽しかったし、先生はわたしを退屈させなかった。
その頃はわたしもまだまだ子供で、人懐っこい時期もあったもんだから、先生が毎日来てくれるうちに、先生に対して心を開いていた。
毎日、先生が回診以外に来てくれるのを心待ちにしていた。
他の患者さんの所に時間使ってないで、早くわたしの所へ来てほしい。
たくさんおもしろい話をしてほしい。
わたしだけの先生でいてほしい。独り占めしたい。
気づいた頃には、わたしは先生に恋をしていた。