「開けてみて」
「え」
「後ろ、開けてみて」
から生徒手帳を渡され、言われるままに後ろのページを開いた。
後ろには生徒証明書があるだけで、何も変なものなんてない。
見開きの左側、そこにはの顔写真。俺の生徒手帳にも写真はある。
見開きの右側にはの名前。学年、所属組、住所、それから生年月日。
俺の生徒手帳にもそれは記されている。
の生徒手帳はとくにどこも変わったところはなく、ごく普通のそれだった。
けれど。
生年月日の数字が少しおかしいことに気づく。
俺はの誕生日を知ってるわけじゃねぇから、誕生日自体が間違ってるかは知らない。
問題にしたいのは生年。生まれ年だ。明らかに俺のそれより数が少ない。
一つ…二つ…三つだ。俺のと三つも違う。三つも少ない。どういうことだ?は俺と同じ中二だろ?なのに何で…何で生年月日が…
「何で俺より年上なんだよ」
頭の中がわけわかんねぇことになってる。
納豆を混ぜたみたいに、ぐちゃぐちゃねちゃねちゃ絡み合ってるくせに、いざ箸で掬おうと思うと掬えない。今の俺はそんな感じ。
意味不明で混乱してる俺を見て、はニコリと笑った。
「今度はわたしの話も…聞いてもらえるかな?」
笑っているの顔はやっぱりどこか寂しそうで、儚い、このしびしびと降る霧雨のように見えなくなりそうなほど透明なものだった。