は俺を肯定した。

姉ちゃんにあんなひどいことを、暴力を振るった俺を肯定した。

信じられない。いかにも優等生っていうが。






「嘘つけよ。本当は最低って思ってるくせに」

「あんたねぇ」







憎まれ口を叩く俺には笑みを零す。

さっき見た笑顔と同じ。姉ちゃんのような優しい笑い方。なぜか心が暖かくなる笑い方。

はロボットではないのかもしれない。

きっと、表情があまり出てこないだけなんだ。





そう思うと、俺はすごく悪いことを思ったと実感する。

見てくれだけで人をわかったふりして、本当はわかってなかった。中身まで見てなかったんだ。恥ずかしい。





「そりゃキレて暴れるってことに賛成なんて出来ないよ。でも」







でも、の後がすごく気になる。

たかが気休め程度の言葉なのかもしれないけれど、きっとは俺の心の痛みを取り払ってくれる。

なぜか、そういう気がする。最初、嫌いだったのになぜだろう。に対する苦手意識が和らいでいる。

完全にではないけれど、嫌いではない。笑った顔が姉ちゃんに似てるから?意外に表情が柔らかいから?





笑った顔がけっこう可愛いから?







って、俺は何考えてんだ。ちょっと優しくされたからってそう簡単に認めてたまるか。

それでも、言葉の続きがすごく気になる。

好きか好きじゃないかなんて問題じゃなくて、俺を納得させてくれる何かが隠れている気がしてならない。

の言葉には何かしら力がある。そんな気がしてならない。

は一息ついて続けた。






「大人はとても勝手だと、わたしも、本当にそう思う」








そう言ったの顔は険しくて、それでも悲しそうで苦しそうで、一言では言い表せない何かを俺に訴えるように、複雑な顔をしていた。

はやっぱりロボなんかじゃない。

普段、俺たちには本当の姿を見せていないだけなんだ。ツンツンしてるけど、本当は、本当は


笑ったり傷ついたりする普通の人間なんだ。








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