「暑そうだね」
真向かいに座ってるはこのクソ暑いって言うのに顔色一つ変えずに。
俺が書いてもいない、日誌をスラスラと書き始める。
はクラスのヤツらとは違った雰囲気を持っている女だ。
かといって、目立つわけでもない。
あいつの周りに誰もいないわけではないけれども、どこか俺たちと一線引いてる女。
成績はトップ。品行方正。優等生。
一言で言えばお高く止まった女、ってヤツだ。
この表現を使うってことは、お察しのように俺はこの女が嫌いだ。
見下したように喋りやがるその口調と、それでいて的を射ている的確さが余計に腹立たせる。
まるっきり別の次元に一人いやがる。
真田副部長じゃねぇけど、マジで中学生か?て感じ。
を無視してバサバサとノートを扇ぐ。
私学のくせに、クールビズとか言って冷房の温度を下げやしないから、生ぬるくて気持ち悪い風しか来ない。
「暑かったら扇ぐの止めたら?余計暑くなるよ」
を無視して、いやそれに反するかのように、俺は扇ぎまくった。
バサバサとページがめくれる音がするけれども、一向に涼しくならない。
それどころか逆に汗かいて来たし。気持ち悪ぃ。
「手を動かすんだから暑くなって当然でしょ」
俺の心を見透かしたようには言う。ツンとした言い方が無性に腹が立つ。
馬鹿にされたみたいで。
なんでこいつはこう、癪に障る喋り方なんだ。
「言われなくてもわかってるっつーの」
「だったら無駄に動かないことね」
「わかってるっつってんだろ」
「ならいいけど」
人の忠告は素直に聞くものよ。
ホント。
こういうイチイチ刺がある言い方がムカつくんだよな。
これならキャピキャピ馬鹿みてぇに騒いでる自称俺のファンとかのがよっぽど可愛いって。
「かっわいくねぇの」
聞こえるようにデカい声でわざとらしく言うと、はカリカリと癖のない綺麗な字を書いていた右手を一瞬ピタリと止めた。
ちょっと反応した。
傷ついたのか?以外だな。
この鉄面皮が傷つくなんてあるんだな。
けっこう優越感。思わず顔が綻んでしまう。
かと思うと、また手を動かし始めて、何事もなかったかのように日誌を書き綴って行く。
ダメージゼロってか?つまんねぇ女だな。本当に。
さっきまでニヤニヤしてたのに、思わず眉間に皺ついでに苦笑いしてしまう。
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