「二度と帰って来んな」









思ったよりも冷たい声が出た。

無意識のうちに出た一言は氷のように冷たく鋭かったと自分でも思う。

姉ちゃんは一瞬目を大きく見開いた。

俺よりでかい目がこれでもかってくらい開かれて、そのままゆっくり眩しいものでも見るように目を細めた。

眉をハの字に曲げて、ものすっごく「わたし傷ついた」て、俺に訴えるような顔だった。

そんな顔すんなよ。俺が悪いみたいじゃねぇか。

俺は悪くない。

俺を勝手にガキ扱いしたあんたらが悪いんだ。











「出て行けよ、今すぐ」

「赤也…わたしっ…」









姉ちゃんが俺の腕を掴んで何かを言おうとする。

言い訳なんか聞きたくない。

姉ちゃんは俺と完全に「他人」になることを選んだんだ。

今更何か言ったって、俺の機嫌取りにしか聞こえない。





姉ちゃんが俺の腕を掴んできたけれど、思い切り振り払った。

また怒りに身体を支配され始めている。身体が震える。

これ以上姉ちゃんの顔を見たくない。

視界から消したい。いっそのこと、消えてなくなればいい。

目の前から、この存在が一刻も早く消え失せてほしい。

そんなどす黒い感情をこらえきれず、俺は叫んだ。









「出て行け!!!」









怒りのゲージが満タンになって、すっきり空にするように言葉が吐き出される。

たったその一言が今の俺の率直な気持ち。

これ以上、惨めな気持ちにさせないでほしい。








俺の心からの怒号は予想外に、荒れた部屋内に木霊し響きわたった。






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