「サンキュー、な」
礼を言うなんて慣れてなくて。
しかも、もともと嫌いなヤツだったから、なんだか照れくさくて、くすぐったくて仕方がない。
何かしてないとこっ恥ずかしいから、思わず鼻を人差し指で何度もこすってしまう。
礼を言われたはというと、俺がまさか素直にそんなことを言うと思ってなかったからなのか。
きょとんと呆気に取られたように、俺を見つめる。
「切原くんがお礼を言うなんて」とか、そういう茶化しがいっさいなく、
ぽかん、として俺を見るもんだから、さらに恥ずかしくなってきて。
顔にどんどん熱が集中してきてしまう。
きっと今、俺の顔はタコのように真っ赤だ。
「どういたしまして」
ふふっと俺の反応を楽しむかのように笑うは
素直に可愛いと思ってしまった。
また、顔に熱が集まった。