「あ、そう…」と大して参考にもならない意見にがっかりした、というかのような返事を送ると、
全身の力が抜けるくらい満面の笑みで「ごめんねぇ」と謝られた。
今まであんまり喋ったことないから知らなかったけど、って結構おもしろい上に肝っ玉座りまくりなヤツかもしれない。
それから、はさっきまでの笑みを引っ込めて「切原くん」と俺を呼んだ。
呼ばれた名前と、呼んだ時の表情はさっきと大違いに真面目で、真剣さが伝わってくるまっすぐな言葉だった。
「切原くんにはそうなってもらいたくないんだよね」
「え」
「切原くんには、ちゃんと心の奥底からお姉さんを許してあげてほしいんだよね」
そう言っては窓を見た。俺もつられて、窓の方に頭を向ける。
依然と雨が降っていて、たださっきまでのしびしびといった感じではなく、
ザーザーとそれはまるで、台風が来たかのように雨足は強まるばかり。