「許すしか、方法がなかった」

しびしびと降る雨は激しさを増し、時折雷を伴う。

わたしがこの話をしたのは切原くんが初めてで、まさか彼にこんな話をするとは思っていなかったけれど。

誰にも自分の秘密を、心の内を明かしたことがなかったから、少しスッキリした。

今まで抱えていたものを、少し取り外せた気がした。






「大人って子どもが考えている以上に案外、子どもなんだよ」







とどのつまり、そういうことだ。

だから、周りの大人と子どもに徹しきれない自分の心の狭間で揺れる切原くんが他人ごとに思えなかったし、見過ごすことができなかった。

切原くんには、大人のワガママに振り回されたわたしのような体験をしてもらいたくはない。

手遅れにならないうちに、切原くん自身が寛容な心を持って、彼のお姉さん夫婦を許してあげてほしいと思った。

わたしのように「しこり」のある許諾ではなく、「心からの」許諾を。ぜひとも彼にはお願いしたく思った。






わたしが苦笑いをして言うと、切原くんも釣られてか困ったように笑った。








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