初めて入院してから3度目の春。
わたしは15になったけど、中学に進むことをしなかった。
いまさら知り合いのいる校区に戻って、一年生から始めるのもいやだった。
中検を受けて、そのまま高校に進んだ方が利口なのかもしれないけれど、あえてわたしは中学への進学を選んだ。
表向きは高校は16を越えたらいつでも入学できるけれど、中学生活は一度きり。
裏の理由は何より一刻でも早く二人から離れたかったから。
再婚をした母さんは、病んでいたのが嘘みたいにすっかり元に戻り、先生との愛を育んでいた。
その一方で、手放さないようわたしへの気遣いを忘れていなかった。
腹の中でわたしが何を巧んでいるかも知らず、表向きの理由を訴えると、母さんと先生は受験を後押ししてくれた。
そして1年後。
わたしは立海大学附属中学校の門をくぐることができた。
立海を選んだ理由は三つある。
一つは家からかなり離れていて、通うには親元を離れなければいけないということ。
一つはそこそこ偏差値の高い名門校であること。
一つは父さんが学んだ場であるということ。
母さんは父さんを忘れて行くけれど、わたしは父さんを忘れたくなかった。
立海が、わたしと父さんをつなぎ止めてくれるような気がした。