さっき言ったことと、今言ったことは全く違うけれど、なんとなくその矛盾を突いてはいけないと思った。

でないと、母さんが本当に壊れてしまうと思ったから。

わたしが思っている以上に母さんは追いつめられていて、わたしが考える以上に母さんは先生を愛していた。




そして、わたしが想像するの範疇を飛び越えて、母さんは弱くわたしなんかより子どもだった。





母さんは、わたしが母さんから先生を取り上げたとでも思っているのだろうか。

むしろ、その逆ではないか。母さんがわたしから父さんとの思い出を奪ったんじゃないか。

何を一人で悲劇のヒロインを気取っているんだ、と思うと腹が立った。

けれど、わたしが腹を立てて意固地になればなるほど母さんは狂って行く。

自分のことばかり考えて、母さんなんか狂ってしまえばいい、と思えたらどんなに楽だっただろうか。




結局、病んでいるとはいえ、わたしにはきちんと良心というものが残っていて、母さんを罵り突き放すことができなかった。








母さんのワガママは本当に自分本意で、子ども染みていた。

子どものわたしがわがままを言えないほど。

わたしがまるで悪いみたいに、母さんは言った。
















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