「もっと言うことねぇのか」









悪態を吐くと、は顔を思い切りしかめた。

その顔はお前の話なんかどうでもいい、と言っているように思えて、妙にカチンと来た。





「話聞くだけっつったじゃん」






はごく当たり前かのように俺に言う。いや、そりゃそうだけどさ。確かに話聞くだけっつったけどさ。

まさか、本当にそれだけとは思わねぇじゃんか。






「そう…言ったけどさ…」







ここまで聞いたら普通はなんか返すだろ。普通は。
「大変だったねー」ていう同情とか?「切原くんサイテー」ていう誹謗とか。
それすらも無いってことは人間としての感情欠落?あー言えるかも。って人っつーかロボットみてぇ。妙に冷めてるし。








「何?なんかアドバイスでも欲しいの?」








しかも一言一言的を射てるし。はあれか?神様か?鋭さといい無頓着なとこといい、人外の何かとしか言いようがねぇぞ。

図星を突かれたことに対する驚きで、思わず口ごもってしまう。

何か言葉にしたいけれど、言い返したいけれど。ここでの言葉を否定すると、振り出しに戻って何も聞かれないし探られない。

のことだから十分に有り得る。何も聞かれないままだったら、何も聞けないままだったら、つっかえはひっかかったままじゃねぇか。

に話すことによって俺の体から取れかけてるものが、また融合しようと身体全体にもやをかけようとしている。

このままじゃ、楽になりたいのに楽になれない。












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