わかってる。
本当は俺が悪いってことくらい。
自分の思い通りにならないからって八つ当たりしてることくらい。
何かと理由をこじつけて、俺は悪くないって現実逃避してることも。
わかってる。
姉ちゃんを渡したくなかった。
しかも、あんな頼りないのに奪われるのが許せなかった。
でも、それ以上にいつも俺に対して嘘を吐かない姉ちゃんが俺に隠し事をするような真似をしたことが許せなかったんだ。
こんなの、言い訳にしかならない。
姉ちゃんが俺に対する罪を背負ってるのと同じように、俺も姉ちゃんに対して罪を背負っている。
怒りに任せて、姉ちゃんを傷つけた。
殴ったことに後悔はしていない。
罵倒したことにも。
俺だって同じくらい傷ついたんだから。
でも、なぜだか苦しいんだ。
後悔していないはずなのに、胸が締め付けられる。
たまに姉ちゃんのことを思い出す。
思い出の中の姉ちゃんはいつも笑っていた。
けれども、あの一件以来姉ちゃんは泣いたままだ。
つらい。
泣きたくなるくらいにつらいんだ。
考えないようにしたらいいんだけれども、頭の中から離れない。
あの日の姉ちゃんの悲しそうな顔が頭から離れない。