時間目、数学。

さっきの国語の時間で惰眠を貪った(て、言ったら失礼なんだけど…そのくらい寝てたんだもん)
幸村くんは、今度はつまらなさそうにクルクルペン回しを始めた。それは、本当にもう器用に。一回止まってはまた回し、ではなく、断続的にクルリクルリと回されるもんだから、よく寝起きであんなに手を動かせるな、とか。
テニス部だから手首の鍛え方も違うのかな、とか。あれ?確か、幸村くんを始めテニス部ってパワーリストしてたよね?て、いうことは手に負荷がかかっているのに、あんなに回せちゃうの?とか。色々頭の中で憶測を巡らせながら、感心してしまう。わたしはもう幸村くんに釘付けで、幸村くんのように格好よくペンを回そうと真似をしてみるけれども。全く以て上手くいかない。一回転するどころか、半回転するかしないかのところでボトッと手から落ちてしまう。ペン回しってちょっとやそっとじゃ回せるようにならないんだ、とか、幸村くんはこれをするのにどれくらい練習したんだろう、とか。きっと、妥協をしない人だから、テニスと同じで完璧になるまで練習したんだろうな、とか。思わず、ペン回しを必死になって練習する幸村くんを想像してしまう。考えるだけで、何だか微笑ましくて。さっきのお昼寝といい、幸村くんも、やっぱりわたしたちと何一つ変わらないのかも、と嬉しくなってしまう。



幸村くんのペンはいまだクルリクルリと回っている。
わたしもそれに倣って、練習。してみようかな。




ペンをクルリと回してみると、ポトリ、とノートの上に落ちた。
やっぱり、幸村くんレベルになるには修行が必要なのかもしれないね。
どのくらい練習すればあんなにクルクル回せるようになるんだろう。
回せるようになったら、なんだか幸村くんに一歩近づけるような気がする。
そんな希望を馳せながら、わたしはつまらない数式ばかりを並べる授業の間、ペン回しの練習をする。




よく考えたら真似してるとはいえ、幸村くんとやってること、おそろいだ。そんな発見をして、一人でにやけながら。