時間目、国語の時間。

眠気マックスな上にぽかぽか陽気に誘われて、夢の世界へダイブする人はクラスの半分。
もちろん、窓際3列目、前から4番目の席に座ってる幸村くんも例外ではなく、ゆるゆるウェーブのきれいな髪は、頭がかくんと下に揺れるたびに、さらさら森の木々がさざめくように流れる。がくん!と最も下まで頭が下がると、幸村くんの頭は飛行機が高度を上げるみたいに急に上昇して起き上がった。周りをキョロキョロと見渡す彼は、きっとがくっとなったのが恥ずかしかったからかもしれない。それから肩を揉み、首を左右に倒す。さらに腕を回してストレッチ。疲れてるのかな?大変そうだもんね、テニス部。しかも部長さんだし。全国一を守らなきゃいけないもんね。そりゃ大変だ。

幸村くんは頬杖をついて、改めて授業を聞き入ろうとしているけれども、そこはやっぱり5時間目。どんどん瞼が重たくなっちゃうよね。幸村くんの席の左斜め後ろの隣の列のさらに2個後ろ、つまり窓際列の前から7番目(前から7番目というのは、一番後ろなんです。つまりわたしの席は窓際の一番後ろ)に座っているわたしに幸村くんの顔は見えない。目を閉じて行ってるのかも、というのはわたしの想像(妄想?)にしかすぎないけども、実際にまた頭がどんどん下がっては上がりしてるから、寝そうだっていうのは想像しやすいよね。今の幸村くんは乱気流に巻き込まれた飛行機みたいに不安定。ときどき、寝ないように頭を振る姿がすごく可愛らしい。(男の子に可愛いなんて言っちゃ失礼なんだけどね)

ついに、幸村くんの頭は墜落した。ガクっ、と下を向いたまま動かなくなった。完全に寝ちゃったみたい。テニスではほぼ敵なしの幸村くんといえど、自分の睡眠欲には勝てないみたいだ。パンピーのわたしと同じように、天才にも敵わないものがあるんだな、って思うと何だか嬉しくて親近感が沸いてしまった。普通に中学生をしている幸村くんのそんな後ろ姿を見ると、自然に笑みがこぼれてしまった。

日の光は優しく、教室を照らしていた。